【出演者対談インタビュー 前編】 ATSUSHI×佐藤タイジ(THE FOURCE)『ソラリズムから“カルチャー”をはじめよう』

2022年3/12(土)~13(日)に開催される“野外LIVE充実プロジェクト”「ソラリズム」。2011年3月11日「東日本大震災」から11年が経つPeace On Earth(以後PoE)に併せ東京都千代田区「日比谷小音楽堂」で新たな音楽フェスがスタートを迎えます!そこでそんなソラリズムに出演する「THE FOURCE」のメンバーから、舞踊家/舞踏家のATSUSHIさんと、ソラリズムの発起人でもある佐藤タイジさん、そしてソラリズム主催アースガーデンの南兵衛を交え3/12(土)のステージに向けて想いを語ってもらいました。前編の本記事では「フェスを続ける理由」や「アーティストの担う責任」などをお伝えします。

「“お涙頂戴”はもう終わりにしよう」

南兵衛 個人的には震災から10年経っても「何も変わってない」「まだ続けないと」という感覚がある。震災をきっかけにフェスの主催者として活動し続けている二人にとって、この11年間にはどんな想いがあるのかな?

ATSUSHI 毎年3/11に縁のある宮城の塩釜で開催している3.11 POWER of LIFE(以後PoL)は10年経った段階で一度区切りにしようと思っていたんです。でも地元や携わっている人たちは続けて欲しいと言っていて、続けるからにはもう「お涙頂戴」にはしたくない。ただ昨今のパンデミックがあって、どんな表現をしたらいいのかずっと葛藤してますね。GAMA ROCK FES(以後GRF)も同様に。

タイジ もどかしいよね。

ATSUSHI 今までのように「前向き」な表現ばかりでなくて、今年はいっそシンプルに「独り踊り」をしようと思っているんです。主催者という立場以前に一アーティストとして人間の自然な喜怒哀楽や、この11年間の東北と日本とを照らし合わせるような表現をしてみたい。

タイジ 震災の原発事故から10年経つけれど、例えばチェルノブイリの時のソビエトみたいに、日本もこのまま行けば崩壊しないとは言い切れないと思うんだよね。3.11を経験したからこそ「賢い日本」として団結できるかと思ったけれど、実際は皆バラバラで課題は山積みで。

ATSUSHI 確かに仲間割れとか未だにあるもんね。

タイジ 今人類が「どういう未来を作っていくのか」大きな岐路に立たされているんだよね。だからこそ皆でもっと賢くなって「少しでもましな明日」を作るために、俺は人の集まる場を作って想いを発信し続けている。

ATSUSHI 皆で同じ方向を向けるはずなのにいがみ合いとか妬みとかね…。それも含めて人間なんだけれど切なさを感じるんですよ。

タイジ 皆が共有し得る「明確な答え」って難しいけれど、誰も「死にたい」なんて思っていない。大切なのは共有できるところはちゃんと共有する理性を持つことだと思うんだよね。実際俺とかすぐ怒ってしまうけれど(笑)

南兵衛 僕もこれまで東北に通いながら切なくなる経験もしてきたけど、その切なさを乗り越えて続けてこれた原動力は何だったの?

ATSUSHI 切なさがエネルギーになっているのかもしれない。闇があるから光があるし、言葉にできないそんな感情が自分を突き動かしていたんだと思います。誰に言われなくても続けることが「使命」「宿命」みたいに勝手に背負って。

タイジ THE SOLAR BUDOKAN(以後TSB)もGRFも生み出したからには育てていく責任がある。一過性のお祭り騒ぎでなくて、続けていかないと「この先に何が見えるか」も分からないしね。フェスの主催者やプロデューサーとかってそういう責任を背負い込むヤツがやってるんでしょ?(笑)

ATSUSHI なんでそんな面倒なことわざわざ背負い込んでるんだろうね俺たち(笑)

「“光と影”が生み出すネクストパンク」

ATSUSHI 昨今のパンデミックもあって珍しく今の日常に腹が立つこともあるんです。それを言葉にすると強くなっちゃうから、自分は踊りで表現できないかって考えている。

タイジ パンクの歴史とかを考えれば、怒りが共感を持ち得ないかといったら決してそうじゃないと思う。人間の持つ感情全てを表現して想いを共有することが可能だと証明するのが「アーティストの仕事」だと思うし。日本人はもう少しネガティブな感情や表現と向き合ってもいいとは思うな。

ATSUSHI それは決して悪いことではないもんね。

タイジ 怒りがあるから正義に辿り着く側面もあるしね。今はまたオミクロン株の蔓延で表現するにもビクビクする社会になって。でもワイドショーや行政の態度ほど実際の巷はビクビクしていない気がする。全員が建前言って、全員が本音で生活してるみたいな。皆感じていると思うよ。「嘘つけ!」みたいなね。

ATSUSHI 「次のパンク」じゃないけれど、自分たちアーティストが進んでそんな鬱屈した感情を表現していくべきタイミングなのかもしれないね。最近まで「見えないふり」してきたけど、いい加減自分の苛立ちも認めてあげるようになった。

「“いま、ここ”の感性を呼び起こす」

タイジ 今アフリカでTSBをやりたいって野望が膨らんでいるんだよね(笑)。ソーラーエネルギーには凄く可能性があって、アフリカのようなまだ発展途上の国にこそそれが必要なんじゃないかなって。本当に必要なところに必要な物を渡したい。

ATSUSHI 日本って便利になりすぎていると思うんです。物に頼りすぎて人間としての本能や「野生」がどんどん薄れているような気もする。

南兵衛 ATSUSHI君の踊りには人間の「野生を確認させる何か」があると思うんだよね。

ATSUSHI 誰しもがもつ「人間の本質」を踊りで表現したいと思っているんです。今こそそれに気付くべきタイミングだと思う。この10年白の衣装にこだわってきたけど、今は無意識に黒になっていて。また光を見出したいと思うからこそ、闇を踊ろうとしているんです。綺麗ごとはなしで。

タイジ 俺はずっと思うようにやってきているし、「どう思われるか」とかどうでもいいと思ってるんだよね。人間生きていれば起きること全てが常に「初めて」なんだし、その経験をどういう姿勢で迎えるかが大切だと思う。

ATSUSHI 「今やりたいからやっている」って言い切れるぐらい、アーティストとしてシンプルかつ新鮮な気持ちで表現したいよね。イベントも惰性で続けるつもりもないし「もうなあなあじゃやらない」って。

音楽ライブ文化復興への “野外LIVE充実プロジェクト”「ソラリズム」とは

全国各地の中小規模の野外ステージや会場を音楽ライブ文化復興の拠点へと整え、「年間を通じた各地での野外ライブの実施」を実現し「野外ライブへのアーティストとオーガナイザーを支援」を進め、ウィズコロナ&ポストコロナの時代の世代ジャンルを超えた音楽の場を拡げるプロジェクト。またその資金として、中小企業庁「事業再構築補助金」など複数の助成金の活用をすすめ、申請のノウハウの共有なども含めてコロナ禍からの音楽ライブ文化復興への輪を拡げていく試み。

〈プロフィール〉

ATSUSHI(高橋淳)舞踊家/舞踏家
1979年2月7日東京生まれ。1996年にストリートダンスを始め、様々なイベントやライブに出演。2001年から約20年間、Dragon Ashのメンバーとして活動し、数多くのビッグフェスでのライブや全国ツアー、そしてレコーディングなどを経験。2001年から2019年まで毎年、国内野外フェス最大級といわれているROCK IN JAPAN FESTIVALで最も規模の大きいGRASS STAGEに出演し続けた。2006年にソロダンサーとしても国内外の各地で活動開始。数多くのアーティストとセッションライブを行い、近年では、美術館や博物館、国宝の社寺など、歴史的建造物でも舞踊を行い、各地の伝統芸能ともコラボレーションも行っている。ファッションショーにも多数出演し、パリコレにも出演。海外では、アジア、ヨーロッパ、アメリカにてパフォーマンスを行い、ロシア文化フェスティバルのアンバサダーを務めた経験もある。2009年に生命力の素晴らしさ尊さを伝えていくプロジェクト「POWER of LIFE」を発起し、代表として活動開始。ライブや写真展などの表現活動を行い、動物保護施設アニマルシェルターの支援を行う。2011年3月11日の東日本大震災以降は、現地に足を運び、復興支援活動を行う。その活動から、2012年には宮城県塩竈市にて野外フェスティバル「GAMA ROCK FES」を立ち上げ、毎年9月に開催している。今までの様々なステージで得た経験により、ジャンルや枠にとらわれない踊りと体をいかしたダイナミックな踊りを信条とし、ダンサーとして、独自な表現者の道を進んでいる。

佐藤タイジ
徳島県出身。ギターボーカル日本代表。太陽光発電システムによるロックフェス「THE SOLAR BUDOKAN(since 2012)」の主宰者。日本の音楽界と再生エネルギー界を牽引する稀有なモジャモジャ頭。「ロックスター」「ファンキー最高責任者」は彼の代名詞。’86、シアターブルック結成。’91、RedHotChili Peppersのフロントアクト。’95、EPICからデビュー。「ありったけの愛」がJ-WAVE.FM802など主要FM局でヘビーローテーション。
ちなみに太陽の愛を歌ったこの曲を歌い続けたことが「THE SOLAR BUDOKAN」のアイデアの源泉。この他、クラブ系ユニット「The SunPaulo」ではエレクトロ。加山雄三率いる「The King All Stars」では主要メンバー。そして高円寺阿波おどりとのコラボ「佐藤タイジ&華純連」は日本の音楽史の転換点となる壮大なプロジェクト。楽曲「踊らなソンソン」はiTunes.Spotifyなどで絶賛配信中。佐藤タイジは間違いなく日本代表ロックスターなのだ!

THE FOURCE
2020年結成ダンサーのATSUSHI、BRAHMAN & OAUのKOHKI(g)、シアターブルックの佐藤タイジ(vo,g,b)、和太鼓奏者の坂本雅幸の4人組。
これまでに代官山の「晴れたら空に豆まいて」で3回のワンマンライブを開催。
2021年12月には京都南座にてイベントに出演。
見事な演奏とパフォーマンスを披露。
コアな音楽ファンや関係者から注目を集めている。